季節外れの夏日の連休。大型公園で遊ぶ娘たちを見守る中、
膝裏あたりを小さくつかむような感覚があった。
ふりむいて視線を落とすと
数分前から視界に何度か入っていた、3歳くらいの男の子だった。
その一週間前、中学校の体育大会に行った時も
5歳くらいの男の子がスタスタ歩いてきたと思ったら
校庭の一角のパイプ椅子に座っている私の膝をつかんだ。
「ん?えー?・・あれ?」と、君のママじゃなくてごめんよアピールをするも
そのままごく自然な流れで身軽に膝に飛び乗って校庭を眺めている。
私が発した声と周囲の方の視線があったせいか
5秒ほどしてハッと気付いたらしく、膝から降りてシュタタタ・・・と去っていった。
小さい子供の、乗りたいから乗る!というあの実に本能的な行動が
いつもパパやママにこうしてるんだろうと予想ができて
とてもほほえましくて、あの小さくてもしっかりした重みを懐かしく感じて
体育大会の思い出がより深くなったばかりの事だった。
目線を合わせて、「どうしたのー?」と聞くと
「まま、ねーねいない」と言う。汗なのか土埃なのか、少し汚れている。
「じゃあおばちゃんと一緒に、ママとねーね探しに行く?」と聞くと「うん」と。
抱っこしてみようかと思ったけど、おそらく自分で歩きたい感じだろうと思い
手をつないでみたら、スニーカーの靴紐がほどけていた。
「ボクのお靴のひも、ほどけちゃってるねー、
これ、ちゃんと結んでおかないと、転んじゃって、痛いし危ないから
おばちゃんリボンに結んでもいーい?」としゃがんで見上げながら聞くと
「うんー」という。
段差のある、木の根が張った斜面で、今にも転んでしまいそう。
「ボク、おばちゃんのこの辺にぎゅってつかまっててね」と肩でジェスチャーしたら
おとなしくしっかりつかんでくれた。
素早く、片足で踏んでしまっている泥で茶色くなった靴紐を引き抜いて
もう踏まないように、地面につかないように大きなリボン結びにした。
手のひらに乗るような小さな足だった。
見上げながら表情を見ると、不安さや心細さはなさそうで安心した。
「できた!じゃあ行こうか。ママ見つけたらおばちゃんに教えてね」
そういうと、それはもう小さな小さな手で私の手をひいて
だいぶ危なっかしい場所を小走りする。枝や石を拾って渡してくれたり。
こんな瞬発的に、遊具と他の家族たちを避けながら根っこ踏んで
坂を駆け上がるだなんて久しぶりな私は
「わー」しか言えない。
ママさんに会うまでにケガさせるわけにいかないので必死だった。
その5分後くらいに、
「すいません!!ありがとうございます!!」と背後から声がして
申し訳なさそうなママさんがお辞儀をしてくれて、ボクとバイバイすることになった。
「やったねー、ママに会えたね!よかったねー!」と、手を離す。
娘たちを見つけてその話をした後に左のほうを見たら、
敷物の上でママさんを振りほどいて今にも走りだそうとしている彼が見えた。
この子たちにもあのくらいの頃があった。
まだ遊びたい、と泣くのをチャイルドシートに座らせるのは大変で
走りだして5分もすれば、頬に涙の筋をつけて眠ってしまっていた。
家に着いて夕飯を作る間に眠ってしまいそうなのをどうにか起こしておく。
じゃないと夕飯の時間も、お風呂の時間もずれてしまうから。
ポケットから小石や砂を出したのはいつだったかな。
そんな日々が確かにあったことを思い出したし
その日スカートなんか着なくて正解だった。
誰かのお母さんっぽいお母さんな私は
両手を娘たちとつないで歩いた。大きくなった手と、歩幅を合わせて。
ぼくは幼稚園の頃に、お母さんがまだ字を読めないねぴー(長女)が
自分の持ち物がわかるようにって、目印として生み出されたんだよ。
お母さんが手作りした幼稚園のバッグや巾着袋には
全部ぼくがついてるんだよ。
だからかな、ふたりともぼくの事すごく好きなんだって。
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