著者は医師の坂下千瑞子さん、漫画は横濱マリアさん。
この本は、今後私の余生を変えるきっかけになると確信しています。
長年本屋さんと各地の図書館に通い続け、
膨大な数の本を読んできたと思います。
(人気作品や知名度の高い作品はそんなに知らないので偏ってはいるのですが)
そんな中、このタイミングでこの本と出会えた事は、
何かご神託というかお導きのようにさえ思えて、
読み終える頃には自分でも驚くほど大量の涙と、感謝の気持ちでいっぱいでした。
著者の坂下先生はご自身が血液内科の医師でありながら
腫瘍脊椎骨全摘、重粒子線療法、強力な化学療法など大変な困難を乗り越え、
2007年から世界最大級のガン征圧活動「リレー・フォー・ライフ」の実行委員に。
日本対ガン協会評議員、厚生労働省のガン対策推進協議会委員も務めていらしたそうです。
医師として患者として親として、
ご自身の経験を力に変え、
たくさんの方々を応援してくれていることがわかり
私は当時から身近に同世代のガン経験者がいなかった為
根性と開き直りでその都度乗り越えようとするも
時々襲ってくる絶望、諦め、再発の恐怖に打ちのめされ
それでも仕事と家事育児に紛れてやり過ごす。
そうやって「ガン」というものに揺らされ続けるだけでした。
もっと早く知っていたら、私の生き方も変わっていたのかもしれません。
「ままがいい」
坂下先生が当時、闘病で参観などの行事にいけず、
お子さんが発した「ままがいい」という言葉が
当時の長女と同じでフラッシュバックのように甦りました。
長女のねぴーは当時からそんなに言葉が多いほうではなく
何か言おうとしてもその感情を言葉にするのが難しそうで
泣くほどの感情ならば、不満や悲しみの理由をぶちまけて
楽になってくれたらいいのに、と思うけど
私もそういうところがあって、似ていて、言えなさが伝わって。
ねぴーがまだ小さい、3頭身くらいしかなかった頃、
「ままがいい」と絞りだすように言って苦しげに泣く顔を思い出して
私がよかったんだ、私にいてほしいんだ、私なんだね、と
この子に必要である自分を猛烈に感じて
その短い5文字を聞くたびに心臓を鷲掴みにされるような衝動でした。
子供のそばで話を聞いてあげられない、
寝顔が見れない、手を繋げない日々は
どれだけつらかったでしょう。
AYA世代Adolescent&Young Adult(思春期・若年成人)
AYA世代とは、Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)
の頭文字をとったもので、15歳から39歳の患者さんを指しています。
私は36歳だったので、AYA世代に該当します。
坂下先生と、もうおひとりAYA世代での子宮頸ガン、直腸ガンの体験談を
載せてくださっていた当時34歳だった大石さんのお話に
「キャンサーギフト(ガンがくれた贈り物)」について書かれていました。
がんになってよかったとは決して思いませんががん闘病の経験は
「1日1日ではなく1分1秒を大切に生きていくこと」が大事だと教えてくれました。
引用:がんになった人だけが知っている人生で大切なこと
キャンサーギフトという言葉を知りませんでしたが
私も同じように思っていて、友人に話すときにも
ガンになった事で、人の傷みが知れたからよかったと思ってる
闘病する人の気持ちも、人知れず何か失ってきた人の気持ちも知れた
自分に起きた事を話す時に、
「痛かったーつらかったー」というだけでは
恐怖体験と脅しで終わってしまう気がして、前向きな気持ちを添えよう、と。
でも、ものすごい強がりに聞こえて
逆に痛々しく見えたら気を遣わせるかも、と
言い方を工夫しようと思った事もありました。
AYA世代(15歳から39歳)は
進路、就職、結婚、出産など
人が未来を思う歳です。
当たり前に思い描いていた未来ではなくなることもあります。
容姿が変わったり、子供を産めなくなったり、薬の副作用、
何より心の不調が伴うものです。
時に残酷な現実とも向き合わなければなりません。
この経験を踏まえて生きていくということ。
キャンサーギフトという言葉は、生き方の指針だと感じました。
信条と死ぬまでにやりたいこと
膀胱がんサバイバーの神谷さんのお話も共感が多かったです。
心を患ったり、計8回の入院後に信条ができたそうで、
- 嫌いな人とは会わない
- 嫌いな場所へは行かない
- 嫌いなことはしない
この本が出版された2021年には69歳との事で
もう充分にたくさんの事をご経験なさってきたでしょうから
あえて学びや気付きのために苦手な事に挑まないという選択に思えて
潔いし、希望や喜びのほうをより多く受け止めるための英断だと思いました。
私も3か月前の手術後にそう思いました。
好きなことばかりしようと。
けっこう頑張ってきたし、もういいだろうと。
でも私の場合はまだ、そうもいかないのです。
子供の事、仕事の事、人間関係、
守るべきもののためには、苦手を避けてばかりもいられません。
いつか神谷さんのように、おおらかな気持ちで人生を楽しみ
好きな事をあきらめずに楽しんで生きれる未来に、と思います。
※余談※
死ぬまでにやりたいことも、正直あまりないのです。
地味ですね。
好きな音楽と、自分らしく生きる事と、園芸、とか。
・・・サツマイモとトマトの栽培、好きだし自信あるのです。芋。
昨晩娘たちと、
年末ジャンボが当たったらどうする?という話題で
家と車を買う、父と旅行に行く、農園や牧場、伝統工業に投資する、
あとは、客船に乗る。
まめきちまめこさんのマンガで、楽しそうだったので。
娘たちがガツガツ何かおいしそうに食べるのとか、
感動して喜ぶのとか
そんなことに使いたいですね。
そういえば長女のねぴーは、
キャンピングカーで日本中旅する、
おかあさんの料理をキッチンカーで売る、と言ってました。
(運転するのも、作るのも私なのかもしれなくておそろしい)
次女のみぴーは、「お嬢様学校に行きたい!」と言ってました。
何の影響でしょう。
スパイファミリー?めちゃモテ委員長?マリー・アントワネット?
ヒロアカの八百万さんという富豪で才色兼備なキャラも大好きで。
レディに憧れちゃう年頃なのかもしれません。
私が思いつくのは、おぼっちゃまくん、うる星やつらの面堂家、
後のダイヤモンド・プリンセス、小公女セーラ(ほとばしる昭和感)
自分を知る、人を知る、ガンを知る
今まで本も、ネットの情報もたくさん読んできたつもりで
がんになってしまった、その後どうなるか、については情報を蓄えたものの
増え続けるガン、不治の病ではなくなってきたガン、種類と対策、
医学は日々進化しているけれど、医療の事は敷居が高く、難しく。
でも私にはなったからこそわかる事があって
5年生存率、なんて言葉がある中で自分はこうして生きています。
実際、亡くなってしまった方の話も耳にします。
闘病中の方もいます。
なってしまったのは自分の運命だから、と自己完結せず
自分の体内に情報を持つ者として
何か情報提供ができるのかもしれないし
早期発見・早期治療のきっかけになれるかもしれないと思いました。
ひとり親ということもあり、とにかく働かなくてはならないので
リレー・フォー・ライフに参加するのは先になりそうですが
自分のガンに対して疑問が多すぎて、
このどうにもならない感情を吐露してもいい場所がある事を知れたのは救いでした。
1分1秒、大切に生きるために。
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