作者は画家の濱口瑛士さん。
この本を知るまで私は
「ディスレクシア」に関して無知でした。
学習障害の種類に関しては多少の知識があっても
具体的にどういうことなのか、暮らしや学校生活にどのような影響があるのか
この本を読むことで初めて理解し、知ることができました。
ディス(dys)はギリシャ語で「困難」「欠如」を意味し、
書くことと描くことから引用
レクシア(lexia)は「読む」を意味します。
知的に問題はなく、会話も普通にできるものの、文字の読み書きが困難である症状をいいます。
日本では人口の5~8%、欧米では10~15%いるとされています。
濱口さんはこの作品が2作目で、15歳の時。
初の作品集は12歳の時で
「黒板に描けなかった夢~12歳、
学校からはみ出した少年画家の内なる世界」
絵の表現力はもちろん、文章がとても洗練されていて
感情表現が文章の端々から伝わってきます。
そしてこれが当時15歳の少年の言葉だなんて。
つらい思いをしている頃に書かれた文章でしょうし
受けた傷をリアルに感じるのですが、
作中でも書かれていた、尊敬する方から受けた影響や
描いて生きる道など、ひとつ乗り越えた後の強さがあって
傷を踏み台にして、羽ばたくように昇華したのだと感じました。
濱口さんの作品は(私は絵に関して何の知識もない素人です)
心の中身が描かれているのが伝わってくるので
こちらも心を開け放って拝見しました。
ディスレクシアについてわかりやすく描かれた絵
かわいいキャラ達が作中で活躍し、存在する姿
とても緻密な飛空艇、よく見ると部品のようで生きた存在であったり
異国の模様、色彩、建築物、服装。
鹿児島やパリ、アウシュビッツで得たインスピレーションから描かれた絵は
歴史の凄惨さ、貧困や迫害、差別、希望、光と影、
感じるものが多すぎて目が離せません。
より深く感じ取りたくて目を凝らしているうちに
何度もページをめくっては戻り、を繰り返しました。
出版から6年経つ今
益々進化した作品を生み出していて(濱口瑛士の世界)
これから先も濱口さんの作品で心動かされるのが楽しみです。
そして、文字を書くことが困難なことで受けたいじめや学校生活での苦しみ。
人と同じことができない自分を嫌悪して、
その手を切り落としてしまいたくなるほどの自己否定。
小さい子供の心に、厳しい目線や声を消化する機能は備わっていないから
消えない傷になってしまう。生傷のままで。
できないことは=ダメなことではないし、他にできることはあって
それを見つける事に協力したり、その子らしさを肯定することが
同じく子供だった、大人になれた自分が
子供のためにできることのように思っています。
私自身、自己否定は長い間続いて、
自分は劣っているという思い込みが道を狭め、
何をしても無駄に思えて、人と比べては自分を呪っていた私には
とても他人事には思えませんでした。
(今はすっかり開き直って、自己肯定感たっぷりなのです)
濱口さんを通して、吸収して放たれる世界は
絵の素晴らしさと共にメッセージに満ちていました。
子を持つ親としても、大人の一員としても、
人にはそれぞれに特性があり、標準や一般なんてものに当てはめず
認め合えるやさしい世界になっていくように
できることをして、柔軟に理解する。
子供も大人も、安心して殻を破って羽ばたける世界であってほしいです。
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