写真家、久保敬親さんの作品です。
児童書のコーナーで見つけ、目を奪われた一冊です。
キツネが好きなことは以前きつねの絵本の記事でも
書かせていただきましたが
この絵本(写真本といいましょうか)は
野生であろうキツネを、どうしてこんなに近くで撮れているのかと
不思議に思うほどキツネがリラックスしているように思えて
お名前で検索したところ、
作者の久保さんは2019年に肺がんで亡くなられていたことを知りました。
そしてこの本の出版日はなんと、ねぴーの生年月日と同じでした。
13年前の作品ということになります。
久保さんの奥様へのインタビュー記事を目にしました。
驚くことに久保さんは
自然に同化するまでじっと待ち続け
8年~9年、この同じキツネを撮り続けたのだそうです。
やがてこのキツネは(キツネに限らず久保さんの撮った動物達は)
子供を連れて、カメラの前に立ったのだそうです、
偶然ではなく、何度も。
私はなんだかそれを読んで、大家族の番組のカメラマンを思い出しました。
子供さんが赤ちゃんの頃から撮影し、
大人になって立派に親になり、孫が生まれ、
無垢な幼少期もあれば反抗期もあり、
その長い長い関わりの間に
暮らしてる家族と、撮っているだけの人、ではなくなっていて
そこに言葉にならない信頼関係があり、視聴率や人気とは別に
それぞれに流れる年月と生きる空間が融合しているように思えました。
久保さんは破天荒で、写真を撮りに出ると半年帰ってこなかったり、
車ごと海に落ちたと連絡がきたりと、
奥さまにしてみたらスリルに満ちたご主人だったそうです。
しかし、インタビューは一昨年の内容で、
今も変わらずご主人を愛し、尊敬していることが垣間見えて
亡くなられた後にも、お写真を通じて
ご主人の目線で見た世界をご自身の目で見ることができる事を
なんて尊いことだろうと思いました。
北海道、根室海峡のひろがる浜辺で撮影されたキツネの家族は
陽に透けた毛の一本一本まで見え、
母キツネと父キツネが子犬のように丸くぽってりした顔の子供たちに
餌をとってくる姿、お互いをねぎらうように顔を寄せ合う姿、
そしてかわいらしく丸かった姿が、
研ぎ澄まされた美しさの若者に育ち、巣立っていくところまで。
カメラなんてものをキツネは知らないはずで
それでも雪の降る中、自分たちを好意的に眺め続ける人間を
キツネ達はどう思っていたのでしょう。
久保さんは今も変わらず
大自然に生きる動物たちを撮影しているのかもしれません。
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